2018.01.16
ただ1つの工房が歴史を受け継ぐ
「秋田八丈」
ガタンガタン― 北秋田市の山裾にある工房の扉を開けると、織機のリズミカルな作業音が聞こえてきます。この「ことむ工房」で織られているのは、約200年の歴史を持つ、秋田八丈。八丈島に伝わる本場黄八丈から派生した織物です。1810年頃、秋田藩が絹織物の品質向上のために招いた蓼沼甚平が、藩内に群生するハマナスによる染色方法を開発し、生産がはじまりました。鳶色の独自の風合いは、最盛期の明治中期には全国へ出荷されるほどの人気でしたが現在の生産拠点は、ここだけです。
「伝統を背負ってるなんて言われるけど特別な気負いはないの。毎日コツコツやってるだけなんだから」と陽気に話すのは、工房長の奈良田登志子さん。以前、勤務していた秋田八丈の唯一の生産拠点・滑川機業場が廃業した際に機械を引き受け、ことむ工房を設立しました。
かつて秋田の人々にとって憧れだったという秋田八丈には、今でも根強いファンが多いそう。
「秋田八丈のために若い頃からお金を貯めていたという方がいました。しかし、滑川機業場がなくなって悲しんでいたところ、この工房のことを知ってお越しいただき、とても嬉しそうに手にされていました。今後のことはわからないけど喜んでくれる人がいる限り、全力でやっていきたいですね」と奈良田さんは最後まで笑顔で話してくれました。
ことむ工房工房長 奈良田登志子さん
ことむ工房
- 秋田自動車道鷹巣ICから車で約20分
- 住所
- 秋田県北秋田市綴子戸草沢29MAP
- 電話
- 0186-62-0118
- 時間
- 10:00~17:00
- 定休日
- 日曜日、第3月曜日
- 駐車場
- 無料3台
年季の入った機械を眺めるだけでも楽しい工房内。奈良田さんが冗談を交えながら解説してくれますが当日の作業内容によって対応できないこともあるので事前連絡がおすすめ。